光操作によってトラウマを消す

眼球に光を当てることで過去の記憶を消す治療法

過去に非常につらい体験をしたときに、その後長期間に渡ってフラッシュバックや後遺症に悩まされる症状のことを「PTSD」といいます。

「PTSD」は既に社会的に認知された言葉なので多くの人が知っているとは思いますが、主な例として戦地で戦闘を経験した兵士や、大規模な自然災害によって家族や自宅などを突然なくしたとき、他にも幼少期の虐待やいじめによって引き起こされます。

そうしたPTSDのもとになるのが「トラウマ」という本人にとって精神的ストレスになるものながら何度も頭の中に蘇る記憶のことで、繰り返し思い出されることでますます忘れられないという悪循環を作り出します。

一般の人にとっては「過去の嫌な記憶くらい誰にでもあるだろ」と思うかもしれませんが、重度のPTSDを発症した人になると、眠っているときに悪夢として記憶が蘇って何度も目が覚めてしまったり、過去の経験に類似した光景や音や臭いなどを感じるとその場で動けなくなってしまうなど日常生活に大きな支障をきたします。

実際米国でベトナム戦争に従軍した兵士が、その後PTSDによって社会復帰が困難となってしまった例は非常に多く当時から研究が進められてきました。

その結果として近年導入されるようになったのが認知行動療法である「EMDR」というものでした。
この「EMDR」は「眼球運動による脱感作と再処理法」という日本語名がついているもので、被験者の眼球に光をあて左右に動かすことによって一時的に記憶の感覚を麻痺させ自然に心の奥にある辛い記憶をなくすことができるというものです。

既にこの方法は日本を含む世界中の臨床の場で実践されており、成功例も次々と報告がされています。

横浜市立大学による新技術も発表

しかしEMDRは効果がある治療法である反面、なぜそのような治療が可能となるのかという原因部分については不明確な部分が多くあります。

そこで次世代のトラウマ記憶の消去法として、2016年12月6日に横浜市立大学が新しい光操作によるトラウマ記憶消去法を発表しています。

これは眼球ではなく脳内の海馬に光ファイバーを当てるという方法で、動物の脳が恐怖を感じたときに発生する物質を抑えることができるとしています。

研究ではラットを使った動物実験で紹介をされているのですが、過去に電気ショックなど恐怖体験を与えたマウスの脳内ではAMPA受容体が海馬からシナプスに情報伝達物質を送るという動きが見られたところに着目し、光により受容体を不活性化させるという化学的方法にのっとっています。

今後どのような形で臨床の場で使用をされるようになるか、世界から期待が集まっています。

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